今回は、和食業界の消費者の分析を掲載したいと思います。
個々の業態を深掘りする事で、戦略や立地選定などに活用ください。
2020年12月農林水産省が発表した『和食文化に関する意識調査結果』を基に、以下3点を取り上げました。
●季節の行事や特別な日に関連した食べ物について重要だと思う事
●和食および和食文化に対するイメージ
●和食好きの割合
2019年厚生労働省が発表した『生活衛生関係営業の生産向上を図るためのガイドライン・マニュアル』を基に、以下5点を取り上げました。
●訪日外国人の支出の傾向
●和食利用者の年齢
●和食店一人当たりの利用金額
●和食店の利用動機
●和食店を利用しない理由
農林水産省『和食文化に関する意識調査結果』分析
季節の行事や特別な日に関連した食べ物について重要だと思う事
①旬の食材を食べて季節感を感じる事
②行事の意味を伝える事
③健康を祈る事
上記が上位に入っています。
令和元年と平成27年を比べても、行事の意味や季節感を食を通し意識している方が増えています。
また、手作りする事が減少しており、店舗外販売も含め和食業態の存在がより重要だと予測します。
和食および和食文化に対するイメージ
和食および和食文化に対するイメージの上位は、『季節の行事や特別な日に関連した食べ物について重要だと思う事』と多くの方と一緒のイメージだと捉えています。
ただ、令和元年に新たに追加された項目である、
①価格が高い
②塩分が高い
③地味である
というワードが入り、古いイメージや堅苦しいイメージのネガティブな印象が入っています。
また、技術的な要素で調理が難しいと思っている方も多くいます。
和食好きの割合
和食が好きな割合も、年齢が高くなるほど好きが多くなり、男女とも60代で9割の方が和食が好きとの回答でした。
厚生労働省『生活衛生関係営業の生産向上を図るためのガイドライン・マニュアル』分析
訪日外国人の支出の傾向
訪日外国人の飲食費は支出全体で2番目に多くなっています
和食文化はユネスコ無形文化遺産に登録されており、外国の方に和食の認知はされていると仮定します。
また、訪日前に期待している事の多くは、日本食を食べる事でした。
和食利用者の年齢
和食利用者の多くは60代の高齢者でした。
農林水産省のデータからも健康に良い、バランスが良い、季節感が感じられる事から選択されている可能性が高いと予測します。
また、高齢者の方は、『多くを食べれない・お肉は重い』などのイメージもあると考えます。
和食店一人当たりの利用金額
一人当たり利用金額は6,000円未満、高収入世帯の利用金額は高めとあります。
これは、農林水産省のデータと同じで、和食=高単価というイメージ通りの結果です。
また、高所得者が選択する可能性が高い業態なのかもしれません。
和食店の利用動機
利用動機の評価ポイントは、
①料金
②メニューが工夫されている(季節や創作)
③接客帯度や身だしなみが良い
が、全体の上位の項目でした。
1年以内利用者で単価6,000円以上の方は
①メニューが工夫されている(季節や創作)
②接客態度や身だしなみがよい
③外観・庭・内装(トイレ等も含む)がきれい
が、上位の項目でした。
高単価だと仮定すると店構えなども重要な要素となりえそうです。
また、接客やメニューの工夫はどの業態でも重要な要素だと考えています。
メニューの工夫では、顧客管理を行い、同じ商品を出さない事や好みの味付けにするなどの工夫も含まれていそうです。
和食店を利用しない理由
利用しない理由が、
①料金が高いと思うから
②利用に向かないと思うから
③特別な日に利用する場所だと思うから
④カジュアルな服装では行けないと思うから
⑤マナーに自信がないから
が、上位の項目でした。
高級なイメージが先行され、敷居の高さ、座敷への苦手意識、シーンが絞られ利用に向かないという結果です。
農林水産省のデータと似通っている部分が見受けられます。
その他のデータ
接待に関して
国の情報ではありませんでしたが、知恵としてご活用ください。
出所:オープンテーブル株式会社HP 2016年 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000008718.html
接待時の6割の方が和食業態を選択している
ひと昔前の接待は、接待を受ける側が高齢者で少量で薄味なもので高級という事で、和食の割烹や料亭が選ばれていた可能性があり、それが習慣的になったのではないかと考察します。
他にも接待をする側は、接待時はスーツの為、座敷は避ける、個室があるかなどを気にしている様です。
接待時に重要な事
接待する側が重要な事は、雰囲気、立地条件、メニューという事でした。
接待を受ける側が心地良い店舗が選ばれると予想します。
接待時の価格帯
接待時の価格帯は10,000円~15,000円が一番多い傾向でした。
最後に
農林水産省のデータより、和食業態の価値が明確になり、ネガティブをポジティブに変換する事にチャンスがあると思いました。
厚生労働省のデータからは、インバウンドや高所得者向けサービスの可能性を感じました。
掲載したデータを基に、重複した項目を洗い出します。
・利用者の半数以上は、もとから和食が好きな60代以上の男女
・価格が高いイメージがある
・和食に抵抗感の多くは、高価格、敷居が高い、利用に向かない、古い堅苦しいである
上記を基に『戦略・ターゲット・サービス』を考えていきます。
戦略として、
・季節感を商品だけでなく、店舗全体で表現する
・調理の難しさを演出し、季節の行事や特別な日を発信する
・古いや地味、敷居が高いなどのネガティブイメージをポジティブイメージに変換する
上記は、和食業態だからこそできる季節感や行事を武器として活用する事だと考えます。
ターゲットとして、
・長期戦略として、若者を取り込んでいく
・インバウンド・高所得者・接待する方をターゲットとする
サービスとして、
・接待用のお見上げ
・季節の行事や冠婚葬祭の際の商品
データを解析すると、重複している項目を覆す事ができれば、老若男女が選択する業態への可能性もあるのではないかと思う様なデータでした。
上記も含め、和食業態は戦う場所を選定する事が重要な業態でありますが、顧客にフィットした時には高単価までを網羅でき、 また、子供が高齢者になった際にも、業態離れ(例えばマクドナルドは40代頃食べなくなる)を起こさず経営に長期的な安定をもたらす可能性がある業態だとも感じました。