今回は、開業時や運営時に必ず出てくるお金の問題『資金調達』を調査しました。
改めて調査すると、資金調達の『種類』や『特徴』に関し知らない事が多く、また違いも様々です。
調べれば調べるほど、選択する資金調達が一人一人異なると感じました。
資金調達の融資をメインに調査しましたので、事業の開業時や運営時にご活用下さい。
資金調達の目的
資金調達とは、会社を運営するために必要な資金の調達を行うことです。
獲得した資金は、「開業」「設備投資」「新規事業の立ち上げ」などに使用されます。
資金調達が必要な時
創業時の初期費用
起業・開業に必要な資金(費用)のコト
- 事業に必要な物品の購入費用
- 設備投資費用(初期)
- 工事費(内外装など)
- 保証金(敷金)や前払賃料
運転資金
事業が軌道に乗るまでの間に備える資金のコト
- 家賃
- 水光熱費
- 通信費
- 仕入代金
- 従業員の給料
- 生活費
新たな設備投資
設備を更新したり、新たに設備を導入したりするなどの設備投資
事業拡大などの資金が必要な時
資金調達の種類
デッドファイナンス
- 融資のコト
- 借入等を行い、負債として資金調達をすること
- 原則的に返済期限が存在する資金調達手法(=返済の義務がある)
- 資金の出し手は、債権者となる
エクイティファイナンス
- 株式発行して、株主資本として資金調達をすること
- 返済がない資金調達手法(=返済の義務がない)
- 株主は、会社の所有者となり、原則として議決権を有する
- エクイティファイナンスの種類
- 第三者割当増資
- 株主割当増資
- 公募増資
- 転換社債型新株予約権付社債
- 外部からの調達の種類
- ベンチャーキャピタル
- コーポレートベンチャーキャピタル
- エンジェル投資家
- 参考:クラウドファンディング (エクイティファイナンスのケースもあり)
資金調達先と特徴
政府系金融機関
*政府系金融機関の日本政策投資銀行と国際協力銀行は中小零細企業向けでは無いと考え除外しています。
日本政策金融公庫
- 出所:日本政策金融公庫 HP https://www.jfc.go.jp/
- 一般の国民、中小企業、農林水産業者への資金調達、支援が中心の業務
- 国民生活事業が小規模事業者や創業企業の支援を行っている
- 小規模事業者経営改善資金融資制度(マル経融資)も日本政策金融公庫が行う融資制度の一つ
- 中小企業経営力強化資金制度も日本政策金融公庫が行う融資制度の一つ
- 事業例
- 事業創業支援
- 国の教育ローン
商工組合中央金庫
- 出所:商工中金 HP https://www.shokochukin.co.jp/
- 中小企業向けの融資が主な業務内容
- 47都道府県すべてに店舗を展開し、「地方創生」に貢献
- 最近では中小企業の海外進出を手助けする事業も行っている
- 事業例
- サポーター製造販売業社支援
- バナナ栽培の事業支援
- キャビアの製造、販売事業支援
日本政策金融公庫と商工組合中央金庫(商工中金)の違い
保証協会の保証がつくかどうか
- 商工中金
- 信用保証協会の保証をつける場合がある
- リスクが大きい貸付先については、民間金融機関と同様に保証協会の保証を求める場合がある
- 日本政策金融公庫
- つかない
預金・決済機能があるか
- 商工中金
- 預金・決済機能があり、手形割引や短期融資を行うことができる
- 日本政策金融公庫
- 預金・決済機能は無い
融資の対象企業
- 商工中金
- 上場企業でなければ、規模が大きな会社でも融資を受けられる可能性がある
- 会社のステージが進んだ会社向け
- 日本政策金融公庫
- 創業、中小企業しか利用できない
融資審査
- 商工中金
- 自身で資金調達を行っており、融資審査は厳しくなっている
- ある程度の経営実績が必要な為、創業融資には不向き
- 日本政策金融公庫
- 創業や事業再生などの支援を積極的に行っている
その他
- 商工中金
- 組合員にしか融資しないことになっていますので、融資を受けるには組合員になる必要がある
制度融資
- 都道府県などの自治体、金融機関、信用保証協会が連携して提供する融資制度
- 自治体と信用保証協会が協力することで、中小企業や小規模事業者の負担を減らし資金を借りやすくしている
- 各自治体によって制度や融資メニューに違いがある
- 制度融資への申し込みを行うと、金融機関は保証協会に保証の申し込みをする
- 保証協会
- 出所:全国信用保証協会連合会 HP https://www.zenshinhoren.or.jp/
- 保証協会が信用保証をしてくれることで、万が一返済ができなくなった時に弁済してもらえる
- 自治体
- 信用保証料を補助
- 保証料の一部を補助することで、通常より割安な特別保証料率を設定できる
- 保証率とは
- 信用保証協会から保証を受ける際に、対価として支払う信用保証料を計算するための指標(パーセンテージ)のこと
銀行融資
プロパー融資
- 公的機関である信用保証協会の保証を受けずに、銀行と事業主が直接取引を行う融資方法
- 返済が滞ってしまった場合には、銀行側が大きな損害を受けることになるため、融資審査は厳しい
- 創業して間もない企業は、信用力の点からプロパー融資を利用することが難しい
信用保証付き融資
- 信用保証協会の信用保証している融資は、総じて「信用保証付き融資」や「マル保」などと呼ばれる
- 「制度融資」も「信用保証付き融資」の一部
- 信用保証付き融資とは、信用保証協会が融資の保証を行う融資のこと
- 返済が困難となってしまった事業主の代わりに、信用保証協会が立て替えて返済を行う融資方法
- 事業主は信用保証を利用する対価として、信用保証協会に対して、所定の信用保証料を支払う
信用金庫・信用組合
- 信用金庫
- 限定された地域の中小企業や個人事業主のための金融機関
- 信用組合
- 信用金庫と同様に営業エリアが限定された地域の中小企業や個人事業主のための金融機関
信用金庫と信用組合の違い
金融機関を管理する法律が異なる
- 信用金庫は信用金庫法
- 信用組合は中小企業等協同組合法と協同組合による金融事業に関する法律
- 銀行は銀行法
設立目的
- 信用金庫はその地域の民衆
- 信用組合は所属する組合員
- 銀行は利用者であれば誰でも
業務範囲
- 信用金庫
- 預金に制限はない
- 融資は「原則会員のみ利用可能」と制限されている信用組合
- 例外とて700万円以内の小口融資は会員以外の利用が認められている
- 信用組合
- 預金、融資ともに「原則組合員のみが対象」
会員資格の条件
- 信用金庫
- 地区内において
- 住所または居所を有する者
- 事業所を有する者
- 勤労に従事する者
- 事業所を有する者の役員
- 事業者の場合
- 従業員300人以下または資本金9億円以下の事業者
- 地区内において
- 信用組合
- 地区内において
- 住所または居所を有する者
- 事業を行う小規模の事業者
- 勤労に従事する者
- 事業を行う小規模の事業者の役員
- 事業者の場合
- 従業員300人以下または資本金3億円以下の事業者(卸売業は100人または1億円、小売業は50人または5千万円、サービス業は100人または5千万円)
- 地区内において
ノンバンク
- 銀行・信用金庫などのように預金業務を行っていない貸金業務専門の金融機関
- ビジネスローン以外は、基本的に一般消費者向けローン商品
- 審査の時間が早く急を要する資金調達に便利
- ノンバンクは「貸金業法」
- 取扱先
- 信販会社
- 販売信用(商品やサービスの代金を立替払いし、あとから消費者に請求するサービス)を主な事業としており、クレジットカードや、各種ローン
- クレジットカード会社
- 消費者金融業者
- 一般消費者(個人)に対して融資を実施する金融業者
- 個人向け融資サービス「カードローン」に特化したサービスを提供
- 信販会社
ビジネスローン
- 事業資金専用のローン商品のこと
- 申し込めるのは法人経営者および個人事業主のみ
- 取扱先
- 銀行
- 信販・クレジットカード会社
- 消費者金融業者 など
補助金・助成金
- 返済不要のお金
- お金を支払った後にその分が入金される仕組み
- 入金までにかかる時間が融資よりも長い
- 中小企業庁が運営する中小企業向け補助金・総合支援サイトの「ミラサポplus」から支援制度を探せる
- 出所:中小企業向け補助金・総合支援サイト 『ミラサポplus』 HP https://mirasapo-plus.go.jp/
- 補助金
- 採択件数が決められているため、審査に通過した場合のみ受給できる
- 補助金の例
- 雇用調整助成金
- キャリアアップ助成金
- 小規模事業者持続化補助金
- 助成金
- 審査はなく、定められている要件を満たしている場合は受給できる
- 助成金の例
- 創業助成金
- 東京都内で創業する人は創業初期の経費として利用できる
- 出所:東京都創業NET HP https://www.tokyo-sogyo-net.metro.tokyo.lg.jp/finance/sogyo_josei.html
- 創業助成金
- 補助金
その他
- 社債・私募債
資金調達先別のメリット・デメリット
資金調達先別のメリットとデメリットは、申込者の状況や利用する融資制度によっても異なるため、全ての人に当てはまるわけではありませんので、まずは担当者や専門家に相談し、状況に合った融資制度を紹介してもらうことをお勧め致します。
日本政策金融公庫
メリット
- 民間の金融機関よりも金利が低い傾向がある
- 現在(令和5年4月3日)の基準利率は2.23%~3.20%
- 出所:日本政策金融公庫 HP https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html
- 無担保・無保証の融資制度がある
- 『新創業融資制度』は原則として保証人が不要
- 法人代表者の連帯保証を不要とする制度を希望することも可能
- 創業初期でも申し込みやすい
- 銀行や信用金庫に申し込めなかった人にとってはメリットのひとつ
- 返済期間が民間の金融機関よりも長い傾向がある
- 設備資金は20年以内(うち据置期間2年以内)
- 運転資金は7年以内(うち据置期間2年以内)
- 利子のみの支払いとなる据置期間を希望することが可能
- 返済期間が長ければ、余裕が生まれますが、金利による利息により、返済総額は増える傾向もある
- 手続きにかかる工数が少ない傾向がある
- 民間金融機関では金融機関と信用保証協会の両方の審査を受けることになる為、手続きの工数がかかる
デメリット
- 中小企業事業の場合は繰り上げ返済ができない
- 国民生活事業の融資制度は繰り上げ返済できますが、中小企業事業の融資制度は繰り上げ返済ができない
- 繰上げ返済とは、毎月の返済額とは別に、まとまった額を返済する方法
- 早期完済を計画している中小企業の人は、日本政策金融公庫の担当者に相談するのがお勧め
- 国民生活事業の融資制度は繰り上げ返済できますが、中小企業事業の融資制度は繰り上げ返済ができない
- 審査期間が長い傾向がある
- 実際に融資を受けるまでの期間は1か月~1か月程度かかる可能性もある
- 支店と担当者が選べない
制度融資
メリット
- 金利が低い
- 長期間の借入が可能
- 審査のハードルが低い
- 担保や保証人が不要なこともある
デメリット
- 信用保証料が発生する
- 手続きに時間がかかる
信用金庫
メリット
- 中小企業や個人事業主でも取引が可能
- 利益ではなく地域社会発展という視点での審査をしてくれる可能性もある
- WEB上で取引ができる信用金庫も増えてきている
- 創業支援サービスや企業同士のマッチング支援など、地元企業のためのサービスが手厚い
- 貸し渋り・貸し剥がしをせず、長期的に付き合う事ができる
デメリット
- 対象地域が限られている
- 会員資格を満たさなければ、基本的に利用できない
- ATMの数も銀行と比べれば少なく、人によっては使いにくいと感じる
- 金利が高い可能性がある
- 資金が限られている為、大きな額の資金調達が困難
信用組合
メリット
- 融資までのハードルが低い
- 信用組合は組合員の相互扶助、困ったときはお互い助け合いの精神
デメリット
- 組合員が対象
- 出資をすることで初めて組合員となる
- 金利の高さ
- 融資額の上限が低い
ノンバンク
メリット
- 審査の時間が早く急を要する資金調達に便利
- 原則無担保・無保証人
デメリット
- 金利が高めに設定されているため、返済負担が大きい
- 一度ノンバンクからの融資を受けてその内容が決算書類に掲載されていると「公的融資や民間金融機関から融資が受けられない企業」という見方をされる可能性も否めない
ビジネスローン
メリット
- 融資スピードが速いことが多い
- 最短で即日、遅くとも1週間~10日程度で融資が受けられることがある
- 原則無担保、無保証人で申し込みができる
- ビジネスローンは総量規制の例外に該当するため、年収の3分の1以上の資金も調達することができる
デメリット
- 公的機関や銀行融資に比べて金利が高い
- 公的機関や銀行融資に比べて借入可能額が少額
- 将来、銀行融資を受ける際に審査に影響する可能性がある
補助金・助成金
メリット
- 起業前・起業後どちらでも申込みできることが多い
- 基本的に返済不要
- 助成金の場合には申請すれば高確率で受給ができる
デメリット
- 常に募集しておらず、申込み期間がある
- 採択率が低い傾向にある
- 補助金は後払いの為、つなぎ資金を用意する必要がある
- 補助対象経費の種類は限定されている
- 将来、収益が上がった場合は補助金額を上限に返済することもある
最後に
調査すると、資金調達方法や資金調達先が個々の状況で違うと感じました。
自己資金や調達期間・資金調達額・条件等で変わり、また、開業時や運営時・調達資金額により融資先が異なり、尚且つ、会社のステージに合わせて融資先が変わるとも感じました。
店舗開業.comが独断で選択するならば、
開業時は、
・日本政策金融公庫
・信用金庫
・制度融資
・+補助金・助成金
運営時は、
・日本政策金融公庫
・信用金庫
・制度融資
・+補助金・助成金
調達資金が多額の場合は、
・銀行
上記の調達先に関しては、更に明確に選択しやすくするために深掘り調査を考えています。
どの資金調達方法が良いのか、どの調達先が良いのかは、一人一人異なると思いますが、事業の開業時や運営時にご活用下さい。